「情報漏洩」と「情報流出」の違いとは?正しい使い分けと事例を解説

ニュースやビジネスシーンでよく耳にする「情報漏洩」と「情報流出」。

どちらも「重要な情報が外部に出てしまう」というイメージがありますが、実は意味が異なります。

正しく使い分けることで、企業の信用を守り、適切なリスク管理ができるようになります。

本記事では、「情報漏洩」と「情報流出」の違いや使い方、具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。

例文を通じて、ビジネスやニュースで適切に用いるポイントも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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「情報漏洩」と「情報流出」の基本的な意味

まずは、それぞれの言葉の基本的な意味を確認しましょう。

言葉の違いを正確に理解することで、適切な使い分けができるようになります。

「情報漏洩」とは? 正しい定義と概要

「情報漏洩(じょうほうろうえい)」とは、本来外部に公開すべきでない情報が、組織や個人の内部から外部へ漏れ出ることを指します。

重要なポイントは、「内部から」という点です。

つまり、情報の管理者側の問題により情報が外部に出てしまった状態を表現しています。

情報漏洩には主に以下の2つのケースがあります:

🔍 意図的な漏洩:社員による機密情報の持ち出しや売却など、故意に行われるもの
🔍 過失による漏洩:うっかりメールの宛先を間違えたり、書類を紛失したりするなど、不注意によるもの

どちらの場合も、情報を管理する側に原因があるという点が「情報漏洩」という言葉の本質です。

「情報流出」とは? どのような場合に使うのか

一方、「情報流出(じょうほうりゅうしゅつ)」は、情報が外部に出てしまったという客観的な事実や結果を指す言葉です。

原因や経緯よりも、「情報が外に出た」という現象自体に焦点を当てています。

情報流出は、以下のようなケースで使われます:

🔍 サイバー攻撃による流出:外部からのハッキングやマルウェア感染による情報の流出
🔍 システム障害による流出:システムの不具合やバグによる意図しない情報の公開
🔍 原因が特定できない情報の外部流出:どのように情報が外部に出たのか原因が特定されていない場合

情報流出は結果に焦点を当てる言葉であるため、責任の所在については必ずしも明確ではありません。

「情報漏洩」と「情報流出」の類似点と違いとは?

両者の違いをより明確にするために、類似点と違いを表にまとめてみましょう。

観点 情報漏洩 情報流出
焦点 原因・経緯(内部の問題) 結果・状態(外部への流出という事実)
責任の所在 内部(組織や個人) 不明確(状況による)
ニュアンス 管理者側の過失や責任を含意 客観的な事実を表現
使用場面 内部要因が明らかな場合 原因究明前や外部要因の場合

重要なのは、「情報漏洩」には情報管理者の責任が含まれるのに対し、「情報流出」はより中立的な表現であるという点です。

このニュアンスの違いが、使い分けの鍵となります。

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使い分けのポイントと具体的な事例

それでは、実際にどのように使い分ければよいのか、具体的な事例とともに見ていきましょう。

「情報漏洩」=内部からの漏れ(過失・意図的)

「情報漏洩」を使うべき典型的なケースとしては、以下のような状況が挙げられます:

社員による顧客情報の持ち出し:退職する社員が顧客リストを持ち出して競合他社に提供した
メールの誤送信:全社員のメールアドレスをBCCではなくTOで送信してしまった
内部資料の紛失:機密書類の入ったノートパソコンを電車内に置き忘れた
SNSでの不適切な情報公開:社員が未発表の新製品情報を個人のSNSで公開してしまった

これらの事例はいずれも、組織や個人の内部に原因があるため、「情報漏洩」と表現するのが適切です。

「情報流出」=外部に出た事実を指す

「情報流出」が適切なケースは以下のようなものです:

ハッキングによる情報の外部流出:外部からのサイバー攻撃によりデータベースの情報が外部に流出した
システム障害による意図しない情報公開:ウェブサイトのバグにより、本来非公開の情報が閲覧可能になった
調査中の事案:「当社の顧客情報が外部サイトに掲載されていることが判明。現在、流出経路を調査中」

原因が外部にある場合や、原因が特定されていない段階では「情報流出」を使うのが一般的です。

企業のニュースや報道ではどのように使われるか?

メディアや企業の発表では、この2つの言葉がどのように使われているのでしょうか。

実際の報道を見てみましょう。

情報漏洩の例: 「A社は、社員の不注意により顧客情報が漏洩したことを謝罪しました。担当者がクラウドストレージの権限設定を誤り、個人情報を含むファイルが一般公開状態になっていたことが原因です。」

情報流出の例: 「B社のデータベースからユーザー情報が流出した可能性があることが判明しました。同社は『現在、原因を調査中』としており、外部からの不正アクセスの可能性も視野に入れて調査を進めています。」

企業側としては、初期段階では責任の所在が明確でない場合に「情報流出」という表現を使い、内部の問題と判明した場合に「情報漏洩」という言葉に切り替えるケースが多いようです。

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「情報漏洩」と「情報流出」の使い方を例文で理解しよう

実際の文章の中でどのように使うべきか、具体的な例文を見ながら理解を深めましょう。

ビジネスメールでの正しい使い方

情報漏洩の例

件名:【重要】社内文書の情報漏洩に関するお詫びとご報告

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、弊社社員の不注意により、貴社との取引内容を含む社内文書が外部に漏洩する事態が発生いたしました。
情報管理の不徹底により、このような事態を招きましたことを深くお詫び申し上げます。

情報流出の例

件名:【ご報告】当社システムからの情報流出可能性について

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、当社のウェブサイトに対する不正アクセスにより、お客様の個人情報が外部に流出した可能性があることが判明いたしました。
現在、原因と影響範囲について調査を進めております。

ビジネスメールでは、原因が社内にある場合は「漏洩」、外部要因や原因不明の場合は「流出」と使い分けることで、より正確なコミュニケーションが可能になります。

ニュース記事での使い方(実際の例を交えて)

情報漏洩の実例: 「2020年、大手通信会社の元社員が、顧客約1000万人分の個人情報を外部に持ち出し、名簿業者に売却していたことが発覚。同社は『従業員による情報漏洩』として謝罪した。」

情報流出の実例: 「2023年、大手ECサイトが不正アクセスを受け、最大で数百万件のクレジットカード情報が流出した可能性があると発表。同社は『外部からの攻撃による情報流出』として対応策を講じている。」

報道では、事実関係が明確になった段階で適切な言葉を選択していることがわかります。

特に企業側の発表では、責任の所在を明確にするために言葉選びが重要視されています。

法律的な視点から見た「情報漏洩」と「情報流出」

法律や規制の文脈では、これらの言葉はどのように扱われているのでしょうか。

個人情報保護法では、個人情報の漏えいや滅失、毀損(個人データの「漏えい等」)が発生した場合、事業者は個人情報保護委員会への報告が義務付けられています。

法律上は「漏えい等」という表現が使われており、内部・外部の原因を問わず、情報が不適切に外部に出た場合すべてを指しています。

法的文書では、責任の所在よりも事実関係を重視する傾向があるため、より中立的な「流出」や「漏えい等」という表現が好まれることがあります

ただし、訴訟や責任追及の場面では、原因となった行為を特定するために「漏洩」という言葉が使われることもあります。

情報漏洩・情報流出を防ぐための対策

情報の取り扱いに関するトラブルを防ぐために、企業や個人が実践すべき対策について見ていきましょう。

企業が実践すべきセキュリティ対策

企業として情報漏洩・流出を防ぐための基本的な対策をまとめました:

情報セキュリティポリシーの策定と周知:明確なルールを設け、全社員に徹底する
アクセス権限の適切な管理:必要最小限の権限付与と定期的な見直し
暗号化の徹底:重要データの暗号化、通信の暗号化(SSL/TLS)
定期的なセキュリティ研修:社員の意識向上と最新の脅威に関する教育
多要素認証の導入:ID・パスワードに加え、別の認証要素を追加
セキュリティ監査の実施:定期的な脆弱性診断とリスク評価

特に重要なのは、技術的対策だけでなく人的対策も同時に行うことです。

どれだけ優れたセキュリティシステムを導入しても、取り扱う人間側に問題があれば情報漏洩は防げません。

個人情報を守るためにできること

個人が自分の情報を守るために実践できる対策も紹介します:

強固なパスワード管理:サービスごとに異なるパスワードを使用し、定期的に変更する
二段階認証の活用:可能なサービスではすべて二段階認証を有効にする
不審なメールに注意:フィッシングメールを見分け、むやみにリンクをクリックしない
ソフトウェアの更新:OSやアプリを常に最新の状態に保つ
情報提供の際の慎重な判断:本当に必要な情報かどうかを考慮してから提供する

「情報は一度外部に出てしまうと、完全に回収することは難しい」という意識を持つことが重要です。

過去の情報流出・漏洩事件から学ぶ教訓

過去の主な事件とそこから得られる教訓をまとめました:

事件 概要 学ぶべき教訓
Benesse個人情報漏洩事件 2014年、業務委託先の社員が約3500万件の顧客情報を持ち出して名簿業者に売却 委託先も含めた包括的な情報管理の重要性
Yahoo!データ流出事件 2013年、約1億件のユーザーアカウント情報が不正アクセスにより流出 強固な認証システムと暗号化の必要性
日本年金機構情報流出事件 2015年、標的型メール攻撃により約125万件の個人情報が流出 メール訓練と初期対応の重要性

これらの事件から、情報管理は「起きて当然」という前提で対策を講じること、そしてインシデント発生後の対応計画も事前に準備しておくことの重要性が学べます。

クイズで理解!「情報漏洩」と「情報流出」の違い

ここまでの内容をクイズ形式で復習してみましょう。

以下の状況では、「情報漏洩」と「情報流出」のどちらが適切でしょうか?

どちらが正しい? 例文クイズでチェック

問題1: 「社員がSNSに社内の新製品情報を投稿してしまい、競合他社に情報が(  )してしまった。」

  • A: 漏洩
  • B: 流出

正解: A(漏洩) 解説: 社員の行為により内部から情報が外部に出たため、「漏洩」が正しいです。

問題2: 「当社のサーバーが外部からの攻撃を受け、顧客データが(  )した可能性があります。」

  • A: 漏洩
  • B: 流出

正解: B(流出) 解説: 外部からの攻撃が原因であり、内部の過失ではないため「流出」が適切です。

実際のニュース記事から正しい用語を選ぼう

以下の実際のニュース記事のリード文から、適切な用語を選んでみましょう。

記事1: 「X社は昨日、同社の従業員が誤ってクラウドストレージの設定を公開状態にしていたことにより、顧客約5000人分の個人情報が外部から閲覧可能な状態になっていたことを明らかにした。同社はこの情報(  )について謝罪するとともに、再発防止策を発表した。」

正解: 漏洩 解説: 従業員のミスが原因であり、内部の問題であることが明確なため「漏洩」が適切です。

記事2: 「Y社のオンラインショッピングサイトで、システムの脆弱性を突いた不正アクセスにより、最大10万件のクレジットカード情報が(  )した可能性があることが判明した。現在、同社は捜査機関と連携して詳細を調査中だ。」

正解: 流出 解説: 外部からの攻撃が原因であり、システムの脆弱性が原因であるため「流出」が適切です。

企業として適切な対応を考えるワーク

あなたが企業の広報担当者だとして、以下の状況でどのような言葉選びをするか考えてみましょう。

ケース1: 社内のデータベースから顧客情報が外部に出てしまったが、原因はまだ特定できていない。初期調査では、システムの脆弱性を突いた外部からの攻撃の可能性と、内部関係者による持ち出しの可能性の両方がある。

適切な表現: 「情報流出」 理由: 原因が特定されていない段階では、より中立的な「流出」を使うのが適切です。

ケース2: 社員が退職時に顧客リストを無断でコピーし、転職先企業で使用していたことが発覚した。

適切な表現: 「情報漏洩」 理由: 内部の人間による意図的な行為であることが明確なため、「漏洩」が適切です。

まとめ

「情報漏洩」と「情報流出」の違いをおさらい

本記事で解説した「情報漏洩」と「情報流出」の違いを最終的におさらいしましょう。

情報漏洩(じょうほうろうえい):

  • 内部の問題(過失や意図的行為)による情報の外部流出
  • 管理者側の責任が含意されている
  • 原因が内部にあることが明確な場合に使用

情報流出(じょうほうりゅうしゅつ):

  • 情報が外部に出たという客観的事実を表す
  • 責任の所在については中立的
  • 外部要因や原因不明の場合に適した表現

両者の最大の違いは、「漏洩」が原因(内部の問題)に焦点を当てるのに対し、「流出」は結果(外部への流出という事実)に焦点を当てる点にあります。

正しい使い分けが企業の信頼につながる

言葉の使い分けは単なる言葉遊びではなく、企業のリスク管理やコミュニケーション戦略において重要な意味を持ちます。

適切な言葉選びが信頼につながる理由:

正確性と透明性の証明:状況を正確に伝えることで、情報開示の透明性を示せる
責任の所在の明確化:問題の原因と対応策を適切に伝えることができる
法的リスクの軽減:不適切な表現による誤解や追加的なトラブルを防げる
ステークホルダーとの信頼関係構築:正確な情報提供は長期的な信頼関係につながる

特に危機管理の場面では、情報の正確さと表現の適切さが企業の評価を大きく左右します

正しい言葉を選ぶことは、トラブルからの回復と信頼回復の第一歩と言えるでしょう。

最後に、情報セキュリティの管理者として覚えておきたいのは、「情報漏洩」も「情報流出」も、一度起きてしまえば企業や個人に大きなダメージを与える可能性があるということです。

言葉の使い分けを知ることも大切ですが、それ以上に事前の対策と発生時の適切な対応が最も重要であることを忘れないようにしましょう。

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